「……今までは、大丈夫だったのに……」


ポツリと呟いて、夏歩は閉じていた目を開ける。目を開けることすら億劫なのだが、喉が渇いたのだ。

布団の中からもぞもぞと腕を出してテーブルへ伸ばし、そこにある美織が買ってきてくれたペットボトルを掴む。

美織は一緒にストローも用意してくれていたので、キャップを外して差し込むと、少しだけ上体を起こして吸い付く。

カラカラに乾いた体にスポーツドリンクが染みわたるようで、若干体が楽になった。

また腕を伸ばしてペットボトルをテーブルに戻すと、起こした体をゆっくりと横たえる。急に寝転ぶとクラッとしたり、頭がガンガンするのだ。

無事に元の体勢に戻ったところで、夏歩は「ふう……」と息をつく。

今日もまた、連絡もなしに姿を現さない津田は、一体どこで何をしているのか――無心で寝ていればいいのに、つい余計なことを考えてしまう。

やっぱり何かあったのだろうかなんて、今は他人の心配をしている場合ではないというのに。
どうせ考えるなら、早く治すことだけ考えようと、夏歩は視線をテーブルの方に向ける。

しっかり食べて薬を飲んで温かくして寝ていれば早く治るとわかってはいるけれど、テーブルの上のお粥が目に入ってもちっとも食欲は湧いてこない。

悩ましげな息を吐き出して、夏歩はテーブルから天井へと視線を動かした。