「鍵、閉めたらポストに入れていくからね。次に来た時はチャイム鳴らすから、何とか起きて開けに来て」

「……頑張る」


じゃあね、と手を振る美織に「いってらっしゃい……」と夏歩は力なく手を振り返す。

部屋のドアが閉まり、廊下を歩いていく音がして、次に玄関のドアが閉まると、鍵が回り、最後にカチャンと鍵がポストの底にぶつかる音がした。

部屋の中がシーンとしたところで、夏歩は深く息を吐いて目を瞑る。


「……大丈夫な、はずだったんだけどな……」


それが本当に昨夜シャワーで済ませてしまったせいなのかどうかはわからないけれど、朝になって夏歩がアラームで目覚めると、喉の痛みと頭の痛み、それに加えて体のだるさと寒気に気が付いた。

初めは布団にくるまって耐えていたのだけれど、喉が渇いても酷い寒気とだるさ、体を動かすと強くなる頭痛に水を飲みに行くこともできなくて、これはダメだと美織にSOSメッセージを送ったら、彼女は朝早くから開いているという家の近くのスーパーで買い物をして駆け付けてくれた。

こんな日に限って、と言うより昨日からなのだけれど、津田からは未だに連絡もなく、姿も現さない。

美織は昨日も今日も何度も連絡を取るように促したけれど、夏歩は半ば意地になっていた。