クローゼットを開けて下着を取り出そうと思ったところで、ふと手が止まる。

本日津田はこのアパートに来ていない、夏歩も帰って来てから今までずっとベッドの上、その状態でお風呂が沸いているわけがない。

お風呂に入ってすっきりすれば少しはこのぐちゃぐちゃした頭の中がマシになるかと思ったのに、帰って来てすぐ沸かしておくべきだったと後悔しても遅い。


「……まあ、いいか。前まではずっとそうだったんだし」


呟きつつ夏歩はクローゼットから着替えを取り出すと、それを持ってお風呂場に向かう。
今日は、シャワーで済ませることにした。

朝から少し肌寒さを感じてはいたけれど、真冬にシャワーで済ませても風邪を引くことはなかったのだから、今回も平気だろう。

手早く済ませて部屋に戻ると、夏歩はドライヤーをコンセントに繋いで髪を乾かす。

終わったところで、本日何度目になるかわからないスマートフォンの確認作業を行って、キッチンに向かった。

さて、夕飯はどうしたものかと、夏歩はしばらくその場に立ち尽くす。

冷蔵庫に食材がたっぷり詰まっていることは今朝確認済みだけれど、それを使って何かを作ろうとは少しも思わない。