しばらくそのままの体勢で、夏歩はぼんやりと天井を見上げる。
時折鞄から取り出しておいたスマートフォンを顔の上に掲げ、連絡がないことを確認しては腕をぱたりと下ろす。
何度目かの確認の時、ふと昼間の美織の言葉を思い出して、メッセージアプリを立ち上げてみた。
津田とのトーク画面を開いて、ジッと見つめてしばらく動きを止める。
結局夏歩は何もせずにアプリを閉じると、スマートフォンを脇に置いた。
今朝はどうしたの?それだけでいい。それだけでいいことなんて夏歩だってわかっている。でも、それだけがどうしても送れないのだ。
津田に抱く気持ちは“好きじゃない”で、それが自分の素直な気持ちだと夏歩は思っている。
でも津田は素直じゃないと言うし、美織まで素直になれと言う。
充分素直だと返したいし、今まではそう返してきたけれど、ここ数日で自分がこれまで信じてきたものが揺らぎ始めるのを夏歩は感じていた。
気になってなんかいない、何かあったのではと心配なんてしていない、そんな気持ちとは裏腹に、手は何度もスマートフォンに伸びる。