「でも、綺麗に治ってよかったわね、膝。怪我した本人が全く覚えてないのは、あとも残らず綺麗に傷が治ったからって言うのもあるんじゃない。ほんと、あの時の膝は酷かったんだから」


言われて、夏歩はテーブルの下に視線を落とし、自分の膝を見つめる。
確かに、それらしい傷は一切ない。


「……ところでその話って、今までの話のどこにどう繋がるの?」


膝から美織へ、夏歩は視線を移して問いかける。
蒸しパンを丁度口に入れたところだった美織は、飲み込むまでの間を空けて口を開く。


「そうね、強いて言うなら、誰だって思わぬ拍子に大怪我をすることはあるってところかな。だから、津田だって何かの拍子に怪我をした可能性だって充分あるし、事件か事故に巻き込まれたのかもしれないし、スマホが触れないほど具合が悪いのかもしれないってことを言いたいわけ」

「……ちょっと、無理やりすぎない?」


蒸しパンを口に入れた美織は「ほお?」とちょっぴり間抜けに問い返す。
夏歩はそれにコクっと頷いて、二個目のおにぎりの包装を破く。

結局お昼休みが終わる頃になっても津田からの連絡はなく、夏歩もまた自分から連絡をすることはなかった。



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