元の位置に腰を落ち着けたら、ココアを飲む前にまずスマートフォンを確認。

少しくらい離れていたって同じ部屋にいるのだから鳴れば気付かないはずがないけれど、それでも一応手に取って確認する。

やはり、津田からの連絡はない。

今度はベッドに置かず、視界に入るよう液晶を上にしてテーブルの上に置くと、夏歩はここでようやくマグカップを口元に運ぶ。

ふう、ふう、と吹いてから、そうっと一口。


「…………?」


夏歩はマグカップに視線を落として、微かに揺れるココアをジッと見つめる。それから、勘違いかもしれないので念の為にもう一口。


「んー…………」


やっぱり、何かが違うと思った。
いつもと同じ粉を使って、いつもと同じようにお湯を注いだはずなのに、何かが――。


「……薄い、のか……?いや……ああ、でも……。んー……」


きっちり量って作っているわけではないから、粉やお湯の量に多少違いはあるかもしれないけれど、そんな些細なこと、よっぽど敏感な舌をしていなければ気付かない。

そして夏歩は自分の舌を、それほど敏感だとは思っていない。