しばらくスマートフォンを睨みつけていたら画面が真っ暗になって、険しい顔の自分と目が合った。

そこで、美織の言葉が蘇る。


「……いや、これは、嬉しいのを隠してるんじゃなくてほんとに苛立っ、……“これは”ってなんだ。いつだってほんとだよ」


画面に映った険しい顔の自分に、もしくはふとした瞬間に蘇る美織の言葉に言い訳するように、夏歩は呟く。

誰にも届かない言い訳に自分で突っ込んで、しばらく画面に映る自分と睨みあってから、不毛すぎるとスマートフォンをベッドに置いてキッチンに向かう。

まずはヤカンに水を入れて火にかけると、続いて冷蔵庫を開ける。

津田が買い込んだ食材がたっぷりと詰まっているが、朝ご飯ならまだしも、お弁当を作るのは夏歩にはハードルが高い。

誰かに食べさせるわけではなく自分で食べるのだから、見るのだって食べる時に向かいに座る美織くらいで大勢に披露するわけでもないのだから、挑戦してみてもいいのかもしれないけれど、そもそも今から作り始めて間に合う気がしなかった。

手際がよくて料理に慣れている津田とは違うということを、忘れてはならない。