……駆くんを怒らせちゃった。


「待って……」


駆くんの制服の端をちょっとつまんで、彼を引き留める。


「駆くん、ごめんね。今からちゃんと彼氏って説明するから」


「いらねーよ」


被せ気味に返されてしまって、慌てて首を横にふった。


「ううん、ちゃんと言う」


「だからいいって。彼氏だって言いたくないんだろ? だったらその嘘につきあってやるよ。最後まで」



視線が鋭く落ちてきて、背筋が伸びあがる。


「俺は今宵に片思いしてるんだもんな?」


フッと不敵な笑みを浮かべる駆くんは、制服に絡まったあたしの指先をはじいた。


そして「モチ―。そこのファミレスに入ればよくね?」と言いながら、先を歩きはじめた。