「今宵は、よく本読むの?」


「……あんまり。だけどシリーズになってる本があってね。それの新刊が発売されたからずっと買いたくて」


「へぇ。なんていう本?」


タイトルを言おうと口をひらいた。その時。


「きゃははっ!それ本当ー!?」


甲高い笑い声が車道の向こう側の、斜め前方から聞こえた。


あれ? この声って……?

思わず地面から顔を上げた。


すると、あたしの第一希望だった女子高の制服を来た生徒がふたり、視界に入った。


人懐っこい笑顔を見てあたしは確信する。


「まろやんだ……」



つい零れてしまった声を、駆くんは繰り返した。


「マロヤンダ? それどういうストーリー?」


「あ、ちがくて……。あの子の名前。友達なの」


そう言って開いた手の平で指し示す先を見やった駆くんは簡単に叫んだ。


「まーろーやーん!」

「え!?」


どうして叫んでるの!?

まろやんの視線がこっちを向いた。


「あー! 駆じゃん!!」


そう飛んできた声は、まろやんのじゃない。


「あ。モチだ」


……モチ?


駆くんの友達らしい女子は、モチとよばれ、まろやんの隣で大きく手を振っている。


「今宵ぃー! ひさしぶりー!! って、それだれ!? 彼氏ぃ!?」


まろやん、声大きすぎ……!


「今そっち行くから……」


あたしの声は届いてないのかな。


まろやんは高ぶったテンションを声に乗せる。


「今そっち行くねー!!」