「……ナツキ」



目を開けると、見慣れた部屋にいた。


私の家だ。


あれから眠ってしまったみたい。

体を起こすといつの間に掛けたのかブランケットがスルリと足元に落ちた。


たぶんお母さんが掛けてくれたのだろう。
ベランダで洗濯物を取り込んでる姿が見えた。


自分の部屋に入ると込み上げてくるものがあった。喉につっかかる熱を必死に抑える。


見たくない夢をみた。ううん。あれは現実だ。


やだ。やだやだ。なんで。なんでっ?



幸せだった時間が一瞬にして無いものになってしまった。



もう、彼はいない。この世に。

その事実が嘘であって欲しいと何度も願ったけど、変わりはなくて。


私の部屋にはたくさんの彼との思い出があって。
最期に過ごしたものだってあって。


ねえ、ナツキ。なんで私の隣にいないの?
夏がもう終わっちゃうよ?
寂しいよ。