意地悪な彼でもちゃんと優しい心を持っていることもあって、無事カルボナーラひと口貰うことができた私は大変ご満悦で
カフェレストランから出た私たちはアイスを求め歩き出した。
この時は知らなかった。知る由もなかった。
私にとって最大の悲劇が待っていることを――。
有名アイス店に足を運べば、希望のメニューを店員さんに告げ、心待ちにしていたアイスが手元にやって来る。
近くの椅子に腰をかけると、ふくらはぎが緩んでいくのがわかった。
結構距離歩いたんだ。
と心の中でつぶやき、アイスを口に含む。
マスカットの酸味が口の中に広がって目を固く閉じた。さらに体温より冷たいものが体の中へ入っていく感覚を知り、少し身震いをする。
横に座ってる彼も同じ反応をしてて、堪らず声に出したくなる。
可愛い。
愛おしい。
大好き。
その言葉たちは彼には聞こえない場所に留めておく。だってなんだか改めて思うと気恥ずかしくて。だから敢えて言わない。
「また変な顔してる」
「そんな顔も好きなんでしょ?」
「……まーね」
「そー言ってるナツキも変な顔してるじゃん」
「……狙ってる?」
あ、バレた?
くそーーー!なんで分かるんだ!!!?
「好きだよ」
微かな声。だけど私には確実に届いた声。
短く重なった唇は冷たかったけど、とても甘かった。