ダメだ……気づかれた。
私が何をしていたか……。
焦りと動揺で頭の中が一瞬真っ白になった。
知られたくない……嫌われたくない。
「な、何を言っているんですか?
私が家のモノを持ち出す訳ないじゃないですか」
無理やりでも誤魔化そうとした。
意地でもそれを通そうとする。絶対に認めたくない。
するとお婆さんは、悲しそうな顔をした。
「綾から聞いておかしいと思っていたの。
それに、鍵もしっかり閉めてたし
荒らされた様子もないから身内や部屋の中を
知っている人の犯行だろうと言われて
思い付きたのがあなただった。香澄ちゃんは、
何とか家に入ったことがあるから部屋の状態を
知っているから……」
「だからと言って……犯人扱いするのは、
酷くないですか?証拠もないのに……」
完全に私が犯人だと思われている。
どうしよう……どうしよう。
「香澄ちゃん。なら……その持っている鍵を
私に見せてくれない?」
お婆さんの一言にもうダメだと思った。
鍵を見せてドアを開けたら
その鍵は、この家のモノだとハッキリする。
家の住人でもない私が持っているのは変だ。
それは、私が犯人だという確かな証拠だった。
私は、震える手でその鍵を見せた。
そしてそのまま座り込んでしまった。
「それ……合鍵よね?
部屋に置いてあった合鍵……形が似ているけど
違うものだったわ。私意外と記憶力がいいの。
すぐに違うのだと分かったわ」
「なら……最初から分かって?」
「いいえ。そう思っただけですぐに否定したわ。
あなたが、そんなことするなんて
私は、信じてなかったもの。今もそう。
勘違いだったらどんなにいいかと思った。
どうして、そんなことをしたの?」
その言葉は、怒った口調ではなかった。
むしろ悲しそうで私を心配した声だった。