私は、お礼を言うとリビングから廊下に出た。
右の階段を上がると二世帯の娘夫婦が住んでいる。
娘夫婦の部屋か……。
確かまだ働きに行っている。
そう思うと階段の方に近付いて行く。
上がろうとした時だった。
「お姉ちゃん?そこトイレじゃないよ?」
ハッとする。慌てて振り向くと孫の綾ちゃんだった。
きょとんと私を見ている。ヤバい……気づかれた。
私は、慌ててニコッと笑った。
「あ、トイレ間違えちゃった……。
こっちだっけ?トイレ」
迷ったふりをして誤魔化した。
まだ4歳児だ。いくらでも誤魔化せる。
危ない、危ない。今は、人が居るのだった。
気を付けないといけない。
トイレに行くふりをしてからリビングに戻った。
落ち着かない……やっぱり。
しかし、そんなある日。
いつもの通りに盗み見に入ろうとした。
もちろんこの家にだ……。
周りに人が居ないのかを確認してから
あの鍵を開けて入ろうとする。
鍵穴に入れて回そうとした時だった。
「香澄ちゃん……」
……えっ!?
慌てて振り向くと出掛けたはずのおばさんと
孫の綾ちゃんが居た。何で?
車で行ったのは、確認したはずなのに。
私は、動揺する。まさか……見られるなんて。
「あ、あの……用事で来たら
誰も居なくて……出掛けていたんですね?」
慌てて鍵を抜くと背中で見えないように
手を隠した。まずい……誤魔化さないと。
焦る私にお婆さんは、深いため息を吐いた。
「香澄ちゃん……あなただったのね?
家のモノを持ち出したのは……」