お婆さんは、自分のことより私の心配をしてきた。
それに対して驚きを隠せなかった。
何故?自分の心配だけしなさいよ……。
「だ、大丈夫です。あの……大変でしたね」
「えぇ怖いわよね。まだ誰も家に居なかったから
良かったけど。もし鉢合わせになっていたら
大変だったわ。香澄ちゃんも十分に気を付けるのよ?」
また……。
この人が心配されるたびに胸がざわついた。
奥底に眠っている感情が溢れそうになり
辛い……。なのに熱い。
「お婆ちゃん!」
すると孫の綾ちゃんが、家から出てきて
お婆さんのところに駆け寄りしがみついてきた。
私は、それを見ると余計に胸が張り裂けそうになる。
「あの……これから友達と待ち合わせしているので
失礼します」
慌ててそう言うとその場を後にした。
危なかった……。
もう関わらないようにしなくちゃあ!!
ターゲットを変えないと
気づかれてしまうかもしれない。
そう思うのにあの家族が気になって仕方がない……。
私は、何故かそれでも離れることが出来なかった。
自分でも理由が分からない。
今までさっさと切ることが出来たのに
何故そんなにこだわるのだろうか?あの家族に。
今もまた……。
「あ、香澄ちゃん。丁度良かった。
近所の方にたくさん野菜を頂いたのよ。
香澄ちゃんにもあげるわね。スイカもあるから
今家に寄って行かない?」
バッタリ会った私にそう言ってきた。
この家族も何故そんなに私に関わるのか?
自分で、そうなるように近づいたはずなのに
何故?何故か?多くなってしまう。
自宅に引き寄せられるように上がり込んだ。
すでに自宅の中を把握しているから
改めて入ると変な感じだ。落ち着かない……。
「ちょっと待っててね。
今、スイカを切るから」
「あ、あの……ちょっとお手洗いを
お借りしてもいいですか?」
「えぇ、どうぞ。廊下を出て左側にあるわよ」