「あ。おーい、待って」
最悪だ。
避けられてるのに気づいてないのか。
こんなに鈍いやつだっけ?
「今日はよく会うね」
「……そうだね」
並んで歩くな、離れて歩け、と言いたい。
でも近くには作業をしている生徒たちがたくさんいる。
下手に騒いで何か勘違いされる方が迷惑だ。
この場に人目さえなければ……、
今朝はショックのあまり、悲鳴をあげただけで逃げてしまった分も、平手打ちの一発でもお見舞いしたいところだったのに。
颯は目を細めて、廊下の奥まで見通すように眺める。
「すげえ、文化祭って感じじゃない?
校舎の雰囲気とか、みんなのテンションとか、俺は結構好き。
…ほのかたちのクラスは何やるの?」
親しみを込めて、人懐っこく聞かれると、長年の癖でついうっかり答えてしまう。
「……おばけ屋敷だけど」
「ほのかが?」
「……なに」
面白いことを聞いた、とバカにするように目を細める颯に、ムッとする。