「おそい、栞菜」
口調のわりにさほど不機嫌でもなさそうな廉くんは、そのスタイルの良さからか制服姿でも人ごみの中で目立って見えた。
通りすがりの人が、ちらちらと彼に視線を向けて通り過ぎていく。
カッコよくない?なんて声も聞こえてくる。
イケメンの見る世界ってすごい…。
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「あの…」
わたしが喋り出すと、廉くんは必ず黙って、まっすぐわたしの目を見る。
わたしのペースを待つように。
人一倍話すのが苦手なわたしのためにそうしてくれているんだとわかるんだけど、その猫みたいな綺麗な目に、なんだか逆に緊張してしまう。