パジャマに着替えながら耳を澄ませると、賑やかな声が風に乗って聞こえてくる。
頬を緩めながら聞いていると、足元から「きゃいきゃい」と小さな泣き声が聞こえた。ふと視線を落とすと、手のひらサイズの小鬼が数匹、私を見上げて立っていた。赤ちゃんのようなぷくぷくした体型に、ひとつまみの赤毛、大きな目をした彼らは家鳴と呼ばれる妖だ。
その場にしゃがんで彼らを見下ろす。
「どうしたの?」
彼らはもじもじと恥ずかしそうに俯いたあと、勢いよく背中に隠していたものを私に差し出した。赤い実のそれは鎮守の森に生えているクロガネモチの実だった。
手を差しだすと、とてとてと歩み寄ってきて私の掌にそれを乗せる。
「くれるの?」
そう尋ねれば、彼らはこくこくと頷いてそしてまた恥ずかしそうに顔をかくすと箪笥の裏へ走って行ってしまった。
彼らなりに祝ってくれているのだろうか、と頬を緩める。消えて行ってしまった方へ「ありがとう」とお礼を言うと、箪笥の木がきしきしと鳴った。