桜の木に桃色の蕾が芽吹き、柔らかな日差しが感じられるようになった今日この頃。
「よし」
焦げ茶色のプリーツスカートの折れていた裾を撫でた私は、ひとつ息を吐いて鏡の中の自分を見つめる。
桑色のセーラー服は、襟が白色で、襟と袖のふちに茶色と鶯色の二色で細いラインが入っている。桃の花がモチーフの校章が入った金属ボタンは、汚れひとつなくぴかぴかと輝いていた。今日から通う、隣町の県立第一北高校の制服だ。
試着した時に、自分で結ぶリボンの長さが均等にならず、詩子と苦戦した記憶はまだ新しい。今日は手間取らないように、あらかじめ結んでおいたのだ。
「麻ちゃーん、ご飯できてるよ~」
居間のほうから三門さんが呼ぶ声がする。今行きます、と返事をして、鞄を持って部屋を出た。
そっと顔を覗かせると、丁度三門さんが席に着くところだった。
「お、よく似合ってるよ」
にっこりと微笑まれて恥ずかしさに身を縮める。いそいそと自分の席に着いた。一緒に手を合わせてから箸に手を伸ばす。