ふと我に返ると、電車はおもてら町をとうに抜けていた。山間をいくつか抜けたらしく、田畑はすっかりなくなって、ビルの立ち並ぶ景色が見え始める。そんな風景に少しの寂しさを覚えつつ、途中だった詩子へのメッセージをまた打ち始める。

 あの日、私が唱えたのは『神棚拝詞』という祝詞で、本来は神棚や産土神に向けて唱えるものらしい。

 神棚拝詞を唱えることにより、神さまとひととのつながりが強くなる。だから、“付喪神”になっていたひな人形を他の神さまと同じように祝詞を唱えることで、詩子とひな人形たちのつながりを強くすることができたのだ。その結果、彼らの守りの力を強くさせたのだとか。


 あの日のことを思い出すと、まだ胸がどきどきする。
 初めて言霊の力で友達を守ることができたのだ。いつも三門さんに助けられてきたように、私も自分の力で人を救えることが分かった。


 もっと言霊の力について知りたい。できることを増やしたい。


 そんな思いが一層強まった。


 「早く帰りたいなあ……」


 遠ざかって行く山を見つめながら、私はそう呟いた。