「……高き尊き神(おしえ)のまにまに 直き正しき眞心(まごころ)もちて 誠の道に(たが)ふことなく 負ひ持つ(わざ)(はげ)ましめ給ひ 家門高(いえかどたか)く 身健(みすこやか)に 世のため人のために(つく)さしめ給へと 恐み恐みも白す────」



 唱え終わると同時に、息もつかずに柏手を打った。ひな人形たちにも聞こえるくらいの大きく冴えわたった音を鳴らす。


 ────結守の巫女よ、ありがとう。


 頭の奥に直接語り掛けるような声がしたかと思うと、次の瞬間、目の前のドアが勢いよく開き、私はその場に尻もちを付いた。洞窟の入り口のように強い風が部屋に入り込む。

 詩子が悲鳴を上げる。慌てて駆け寄ったその時、視界の端を色鮮やかな布が横切った。


 「結守の巫女よ、助かったぞ!」

 「我らに力が戻った」

 「兵どもよ、うち祓うのじゃ!」

 「詩子どのをお守りするのじゃ!」


 風に乗って現れた小さな付喪神たち。詩子をずっと見守ってきた、ひな人形の付喪神だった。