三門さんを待っていると、詩子が怪我をしてしまうかもしれない。考えたくもないけれど、取り返しのつかないことになる可能性だってあるんだ。
守れる力を持っているのは、私なんだ。
床に落ちているスマートフォンを拾い上げた。
『麻ちゃん、返事してっ、麻ちゃ……』
「三門さん、どうやって唱えればいいんですか!」
三門さんの言葉を遮った。震えを誤魔化すように、お腹の底に力を入れて叫ぶように尋ねる。
一瞬の間があく。
『……優しい声で歌うように唱えて。神さまに感謝の気持ちを伝えて、力を貸してくださいって思いながら唱えるんだよ』
「わかりました」
涙が出そうだったけれど、きつく目を擦って流れてくる前に止めた。視界が曇れば、祝詞が見えなくなってしまう。
『絶対大丈夫。きっと彼らが力を貸してくれるから。麻ちゃんならできるよ』
その言葉を最後に通話が終わった。しゃがみ込む詩子の肩を抱き寄せる。部屋の窓が軋み始め、揺れが激しくなる。私は息を飲んだ。