気にしなくてもいいからね、とふくりが私の頬にすり寄ってくる。ふわふわした小さな頭に頬を緩めながら「いつものことだもん」と肩を竦めた。

 その時、社務所の扉ががらりとひらいてわっと歓声が上がった。


 「ちょっとみんな、社務所を使う許可はしたけど、羽目を外し過ぎないでね?」


 白衣に水色の袴を身に着けた彼は、七つ年上の松野三門さん。祖父の兄の長男の息子とかなり縁の遠い人だけれど、冬休みからたびたびお世話になっているこの神社の神主さんだ。

 妖たちに肩を叩かれながらこちらに歩み寄ってくる。


 「硬いこと言うなよ三門さま~」

 「そうそう、おめでたい日なんだから」

 「理由をつけて飲みたいだけでしょう? 分かってるよ」


 妖たちは大口を開けてケラケラと笑う。ひとりの妖が笑い過ぎて頭がごとっと落ちて、私の心臓が止まりそうになったが、彼は「また落としちまったよ、おれの頭!」と笑いを取りに行くくらい元気だった。