────弥栄! いやさか~!


 あちこちで酒の入った瓶が掲げられて、社務所の中はわっと賑わう。私はその中心であちこちからお祝いの言葉をかけられていた。

 時刻は真夜中の二時、丑三つ時と呼ばれるその時間は、この世のものではない歪なものたちが動き始める時間だ。逢魔時を過ぎた結守神社は、この世のものではない生き物“妖”たちが参拝に来る。


 「いやあ、おめでたい! 麻は天才だね! そう思わないかい、ババ!」


 青女房と呼ばれる妖は、そのお歯黒を全部見せて軽快に笑った。参道に菓子屋の出店を構える彼女は、持参した金平糖を肴に楽しそうに飲んでいる。

 他にも子泣き爺、のっぺらぼう、天狗、ろくろ首、たくさんの妖が主務所に集っていた。みな夜になると参道に出店をひらく妖たちで、とてもよくしてくれる。それぞれに持ち寄った食べ物と一緒に、楽しそうに語らっていた。