「何があったの!」 「向こうで何かに追われた。おおかた人間の正体に勘付いた妖だろう」 みくりは衣服を整えながら端的にそう答える。鬼門に厳しい目を向けた三門さんは私に手を伸ばし立ち上がらせる。 「頬以外にけがは?」 「……えっと、多分ないです」 私の両肩に手をおいて、肺の空気を出し切るように深く息を吐く。三門さんは「無事でよかった」と眉を下げて笑った。