「人間、だよね……?」


 基本的に妖は自宅まで入ってこれない。玄関の暗証番号は私と三門さん、ババくらいしか知らないからだ。


 じゃあこの人は一体誰? 泥棒にしては行動が大胆過ぎるし、妖なら家鳴たちが隠れたりはしない。


 恐る恐る歩み寄る。思い切って顔を覗き込んだその時、ごが、と男の人のいびきが止まって瞼がわずかに震える。次の瞬間、かっと目が見開かれたかと思うと、私の見ていた景色が反転した。

 畳にねじ伏せられたということに気が付くのにそう時間はかからなかった。

 叫び声をあげれば口を塞がれ、のしかかるようにして身動きを封じられる。恐怖で全身が硬直したその時だった。



 「何してるんですか健一さん!」


 三門さんの慌てふためいた声が耳に届いた。