静かすぎる。鎮守の森が騒いでいない。いつも心地よい音を奏でながら語りかけるように葉を揺らしているのに、その音さえも聞こえない。家鳴たちの足音も、笑い声もだ。
気が付いた途端にどっと汗が滲んだ。鼓動が速くなる。スクールバックの持ち手を強く握りしめながら、足音を立てないように廊下を進む。
手前の部屋から順番に、そっと中を覗いていった。空き部屋、私の部屋、三門さんの部屋、いつもと変わらない光景が続きほっと胸をなでおろす。
やっぱり私の思い込みだったのだのかな。
そう思って居間の障子をすっと開け、開けたまま固まった。
人がいた。
男の人だ。目を閉じているが整った目鼻立ちなのだと分かるほど、日本人にしては彫が深い。鍛えているのか体つきが良く、年齢の検討が付かなかった。
その人はジーンズにティーシャツという姿で、ちゃぶ台の傍に置いてあった座布団を枕代わりにして横になっている。ごごご、といういびきから眠っているのだと分かった。