社の近くでからかさ小僧とは別れた。裏山によって行くらしい。

 本殿へと続く階段をひとりせっせと登り、夕日で赤く染まる社頭に出た。まだ時間帯で言えば表の社が開いている時間だが人気はすっかりない。石の台座の上にはみくりとふくりの姿もなかった。

 参拝客が全く来ないとは限らないのに。

 呆れながら肩を竦め、ぐるりと辺りを見回し深く息をする。朝の張りつめたような神聖な空気も好きだが、この時間帯の社頭もお気に入りだった。神社を訪れた人たちのいろんな力がここに残っているような気がして元気が出る。


 そのまま本殿の前で手を合わせて、帰宅したことと無事一日を過ごせたことのお礼を伝えてから自宅へ向かった。

 玄関で靴を脱ぎながら「ただいま」と声をかけるも、いつもの返事はなかった。三門さんの雪駄がなかったので、どうやら出かけているらしい。


 三門さん、いないんだよね。


 この家には私ひとりのはずなのに、なぜか妙な違和感があった。思えば階段を上るときから感じていたような気がしなくもない。