「どの妖もかげぬいと同じように誰かを大切に思ったり、大事にしている思い出があるんだよ。私たちと一緒なの。もしかしたら私たちよりも、もっと純粋なのかもしれない」

 「……でも、妖は憎むべきものだと、祓うことが正しいことだと。俺はそう、だからすべてを犠牲にしてこれまで、」


 力なくその場に腰を下ろした賀茂くんは蹲るように頭を抱えた。


 「私、この町の妖もこの町の人も温かくて大好き。賀茂くんにも好きになってほしい」


 賀茂くんはいつもどこか退屈そうで、不満げで、寂しそうな目をしていた。ここへ来る前の私に、どこか似ているような気がしたのだ。


 「今度、結守神社においでよ」


 賀茂くんの返事はなかった。少しの気まずさを感じながら「じゃあ、またね」と手を振ると、かげぬいの傍へ駆け寄った。