私が言い切る前に、賀茂くんは親指と人差し指を立てて胸の前で構えた。
「臨む兵 闘う者 皆 陣烈きて前に在りッ!」
無意識に服の上から円禾丸の切羽を握りしめていた。身を固くして歯を食いしばる。目の前で激しい爆発音が響いた。
「なっ」
覚悟していた衝撃は来ず、賀茂くんの驚いたような焦りが混じった声が聞こえた。
恐る恐る顔をあげると、私たちを囲うようにして半円形の薄い膜が浮かんでいるのが分かった。
ドーム型のそれのてっぺんに白い紙が張り付いている。よく見ると、見慣れた字で何かがかいってある。三門さんの御札だった。いつの間にそんなものが、と驚くも、そのおかげで助かったらしい。
「賀茂くん、お願い、話を聞いて! 妖はわるいものばかりじゃないのっ」
「だまれ!」
噛みつくようにそう叫んだ賀茂くんが一瞬だけ泣き出しそうな顔をした。思わず言葉に詰まる。
その時だった。
「忠敬さん……? そこにいらっしゃるの?」
閉め切られていた部屋の窓がゆっくりと開いた。