かげぬいの方がわずかに早かった。
私の脇に手を入れて宙に飛び上がる。それと同時に人形を解いて、鳥の姿に戻った。翼を羽ばたかせ宙に浮かぶ。
見下ろした元居た場所には雷が落ちた後のように稲妻の焦げ跡が残った。
どどど、と鼓動が驚くほど速く波打つ。驚く暇もない一瞬の出来事だった。
かげぬいが少し距離を取ったところに私を下ろした。直ぐに人形にもどると、私を背に庇うようにして前に出る。
「結界が破られ、妖の気配を感じたから来てみれば、────またお前か」
淡々とした声に、はっと息を飲む。暗闇からゆっくりと歩いて来た賀茂くんは、面倒くさそうに顔をしかめた。
「まって、お願い。話を聞いてほしいの。かげぬいは悪い妖じゃないの。今も私を守ってくれたでしょう!」
「陰陽師の屋敷と知ったうえで結界を破り、中へ入ってきた。それだけでも判断材料は十分だ」
「聞いて、賀茂くん! かげぬいは、あなたのおばあさんに」