夜に入った裏の山は不気味だなんて次元を通りこしていた。以前三門さんがこの山について話していたことを思いだす。
丁度おもてら町の鬼門の方角に位置するこの森は、多くの妖が住み着いている。鬼門を封じ、妖たちを見守るために山の麓に神社が建てられたのだとか。
未だにぞっとする容姿をした妖を見るとびっくりしてしまう。慣れたとは言えども怖いものは怖いらしい。
極力前だけを向いて、月明りを頼りに森の中を走った。
目的地の半分くらいまで来たところで、琴の音色に似た美しい鳴き声が山中に響いた。はっと顔をあげる。夜空を美しいしだり尾が横切った。
「かげぬいっ!」
精一杯叫んで彼の名を呼んだ。かげぬいは私の頭上を旋回した後、ゆっくりと高度を落とした。
鳥の姿のかげぬいに会うのは初めてだった。私と同じくらいの大きさで、夢で見た姿よりも少し大きい。
かげぬいは大きな目をじっと私に向ける。