「それで、俺に何のようだい?」
「私が返ってくるまで、この布団で眠っていてくれないかな」
「は?」
目を瞬かせた弥太郎にもう一度「お願い!」と手を合わせる。
ババは数時間に何度か私の様子を見に部屋を訪れる。もしも部屋を抜け出しているのがばれてしまったら、とんでもないことになるのは安易に想像が出きた。だからしばらくの間、弥太郎には私の身代わりとして布団にもぐっていてほしいのだ。
そう説明すると弥太郎は困った顔を浮かべる。
「お嬢さんにはこの前助けてもらった借りがあるし、願いをかなえてやりたいのは山々なんだが、お嬢さんは養生している最中なんだろ? 一体そんなに急いで何をしに行くんだい」
弥太郎は真剣な目をしてそう尋ねてきた。もしかしたら弥太郎が三門さんに密告するかもしれない、そんな不安もあったが、真剣な目には真剣に答えたかった。