「屏風覗きの弥太郎、分かるよね?」
声をひそめてそう尋ねれば、家鳴たちはこくこくと頷く。
「ババにばれないように、ここに連れてきてもらえる?」
任せて、とでも言わんばかりに家鳴たちは小さな胸をトンと叩いて箪笥の影に消えていく。そして十秒もしないうちに天井の板が外れて、猿轡に縄でぐるぐる巻きにされた弥太郎が落ちてきた。
ひっ、と息を飲み慌てて口を押える。廊下の様子を窺いババに勘付かれていないことを確認し、家鳴たちを窘める。
「連れてきてくれたのは、ありがとう。でも手荒すぎるよ……!」
ししし、と悪い笑みを浮かべた家鳴たち。ため息をついて額を押さえていると、後で苦しそうな声が聞こえた。
弥太郎が布団の上で苦しそうにもがいている。慌てて縄を解いた。
「一体全体何をッ……!?」
慌てて弥太郎の口を塞ぎ、小さい声にしてと頼む。弥太郎が渋々だが頷いたのを確認してゆっくり手を離した。
「お嬢さんは俺に恨みでもあんのかい……!?」
「ちがうのごめんさい! 確かに弥太郎を連れてきてって言ったのは私だけど、あんなに手荒に連れてくるとは思っていなくて」
顔の前で手を合わせて許しを請う。弥太郎は複雑そうな顔をして頭の後ろを擦った。