本来ならば今は三学期で学校へ通わなければいけないのだけれど、受験生である中学三年生は、三月からほとんど自由登校になっている。と言うのも、私の通う中学校では私立高校を目指す人が大半で、二月半ばの時点で進学が確定しているからだ。

 一日中自習時間になるため、学校へ行っても家で勉強しても大差はない。だから、こちらの公立高校を受験することに決めた私は、受験日である三月十一日まで三門さんの家で勉強することにしたのだ。


 おしぼりで手を拭いて、「いただきます」と手を合わせてからおにぎりに手を伸ばす。丁度小腹が空いて集中が途切れ始めていたのでありがたかった。

 もぐもぐと口を動かしていると、三門さんがじっとこちらを見ているのに気が付いた。なんだか気まずくて、視線を彷徨わせる。


 「……ねえ、麻ちゃん」

 「は、はい!」


 唐突に名前が呼ばれて、勢いよくおにぎりを飲み込んでしまった。胸をとんとんと叩きながら「何ですか」と尋ねる。