「だって、こっちにはコンビニもゲームセンターもないんだよ?」
「お母さんにも、同じことを言われました」
そう言って笑うと、三門さんは困ったように眉を下げて微笑む。
この町で生まれ育ったお母さんは、どれだけ寂しい高校生活を送ったのかを長々と説明してくれた。結局私の意思は変わらなかったのだけれど。
「滑り止めの私立は、地元を受けたんだよね? まだ間に合うよ、いまからでも……」
「決めたんです。もっと三門さんから学びたいことがあるから」
三門さんはそれを聞いてどこか安心したように微笑んだ。隣に立っていた詩子が「地元での遊び方なら、私に任せて」と得意げに胸を叩く。
私と三門さんは顔を見合わせてぷっと噴き出した。
車内に出発のアナウンスがかかった。やがて扉がぷしゅうと締まる。