そう言い放って薄く笑った。



ヤツの腕がこっちに伸びてくる。


振り払う間もなかった。






「なに、やってるの」





気づけば、目の前にはヤツのシャツが目の前いっぱいに見える。

フワッと石鹸のような匂いがする。





……私は、ギュッとコイツに抱きしめられていた。


それを頭で理解すると、一気に顔が熱くなった。



「ちょ、ちょっと離して!」

慌てて身をよじると、『こーら、暴れないの』なんて言いながら背中をトントン叩いてくる。




「…泣きたい時くらい、泣けばいいじゃん」


私の耳元でコイツの優しい声が囁かれる。




その声を聞いた途端、飲み込んだはずの涙が堰を切ったように溢れてきた。




「あれ、泣かないと思ってたんだけど」

ククッと笑う声が聞こえる。