手が勝手にそれに伸びていく。

ピアノと手の距離が短くなるのと比例するように、動悸が早くなっていく。




意を決し、目をギュッと瞑り、それに触れた。




……久しぶりのピアノは、相変わらず冷たかった。


その感触に、なんだかほっとした。




目を開けて未だに苦しい胸を抑えてそれを手のひらで擦る。



「あれ…。これには埃がついてない」


ほかの物には埃がベッタリ着いているのに、これには全くついていない。



(なんでだろ…?)

誰かが掃除してるのかな。





ピアノの鍵盤の前に立ち、私が一番好きなラの音を弾く。




〜♪