向かいのビルの明かりが1つずつ、
話し合ったかのように消えていく。
下の部屋から漏れる光が、
天と地を覆す気がした。
4000ml3000円の安ウイスキーをストレートで流し込んでいる。
何の味も香りもしないアルコールが、
鼻と頭を抜けて部屋の中に吸い込まれていく。
トボトボと歩く老夫はこちらを見るとすぐ目をそらした。
それに応じようとベランダからウイスキーを垂らした。
4階から落ちたウイスキーはどこか少し僕と似ていた。
下の部屋の灯りが消えた頃、後ろの灯りも消えた。
真っ暗になった一人を照らすのは三日月と雑木林と。
そして漏れ出た涙をアルコールと流し込んだ。
午後十時五十九分。