会見が終了し、会場からでた匡祐と千晃。匡祐は自分よりもうしろを歩いていた千晃の方へ振り返った。
「ありがとう」
そう満面の笑みで伝えると千晃の手を握った。

「神崎千晃さん、こんな場所だけど」
そう言って匡祐は自分の胸ポケットから小さな箱を出した。
そして千晃の左手の薬指にはめられていた福山財閥の関係ブランドが作った新作の婚約指輪を外してその箱から出した指輪を千晃の指にはめた。
「俺と結婚してください」
千晃は誰かに用意されたものではなく、匡祐が選んでくれたその指輪に喜びがあふれた。
「うれしい。きれい!」
無邪気な笑顔の千晃に匡祐が微笑み返す。
「幸せにします。全力で。一緒に幸せ、つかもう」
「はい」

匡祐が選んだ婚約指輪は、神崎のものでも福山のものでもなかった。有名な海外のブランドのもの。控えめなデザインの中にも洗練された美しさを感じる。
自身のブランドでもデザインをしている千晃にはすぐにその指輪の意味が分かった。
この指輪にはメッセージが込められている。