「皆さんにも、言葉には責任を持ちご質問や発言をお願いしたい。あなたは匡祐さんがどのくらいの頻度で弟さんと会っているかご存じですか?弟さんのために先日プレゼントしたものはなにか知っていますか?体調を崩された弟さんの病室からご出勤されていることをご存じですか?」
匡祐が千晃の手に触れて千晃を止めようとした。
「私と初めて会うときに、弟さんは匡祐さんの背中に張り付くように隠れました。その光景を見て、私はお二人の関係の深さを知ったように思います。匡祐さんの弟さんを見つめる瞳の優しさと穏やかさに、私まで幸せな気持ちになりました。」
千晃の言葉に記者が黙る。
「私たちはまだまだ未熟です。それでも二人でいれば乗り越えられることも増えると思っています。私は彼のあたたかく穏やかな心に何度も救われました。だからこそ、これからも精一杯私にできることをする覚悟です。皆さんにも私たちのこれからを見ていていただきたいと思っています。よろしくお願いします。」
はじめて原稿にないことを話した千晃はなぜか心がすっきりとしていた。




会見はその後静かに終了した。