匡祐の有無を言わさないような言葉に記者も一時は黙った。
「福山財閥の後継者として、実のご子息を踏み台にして現在の地位を築かれた方ならではのご意見ですね」
皮肉たっぷりの記者の言葉に千晃がその方向を見た。
すぐに匡祐を見る。
それでも、匡祐は穏やかな顔をして何も答えない。

千晃は小さく深呼吸をしてから話始めた。

「先日の事件に関しては詳しくは神崎の会見でお伝えした通りです。私の会社との直接的な関係はありませんでしたが、それでも神崎にかかわってくださった方が目の前で命を落とされたことに大変ショックを受けました。現在も神崎にかかわってくださる方はたくさんいらっしゃいます。匡祐さんからもありましたが、私たちは何千、何万もの方と繋がっています。精一杯できることには真摯に取り組みたいと思っていますが、力不足であることは十分承知です。私たちの力不足をたくさんのみなさんに支えていただきながら今日まで来ました。質問に関する返答にも、一つ一つにたくさんの方のご意見をいただきながら考え、おこたえしています。それも私たちの責任と思っています。これ以上、苦しむ方を出さないためにも。」
千晃は背筋を伸ばし、まっすぐに匡祐への皮肉を言った記者を見た。