「それで?」
「内部からも、外部からも信じてもらうためには我々両財閥の友好関係を主張しなくてはなりません。」
匡祐が千晃の父に微笑む。
「それで?」
「お義父様もはじめは私たちの婚約話に、お互いの利益のためという考えがおありになったかと思います。」
現状、今すぐにどうこうという段階ではなくとも、財閥の名前があろうと利益につながる時代ではない。”財閥”という組織の形すらそもそも時代遅れかもしれない。
その中で幹部が皆、年齢層が上がり時代の流れに乗り切れないことや若年層からの支持が得られにくいことも懸念されていた。
匡祐はそう言った意図があっての自分たちの婚約話が持ち上がったことを読んでいた。

「だからこそ入籍を急がせていただきました。それから」
匡祐は千晃を見る。
そして緊張して顔が引きつる千晃に優しく微笑みながら言った。
「私は千晃さんを愛しています。これは政略的な結婚ではなく、あくまで恋愛結婚であることを世間に伝えたいんです。若年層の支持を狙えば、両財閥の今後にとってかなり大きなプラスであると思います。」