「今こそ、神崎も、福山も賢く対応しなければ両財閥は共倒れになります。」
「確かか」
千晃の父は自分の専属の秘書に声をかける。
「はい。私の耳にもあくまで噂ですが届いております。」
千晃の父は席から立ち上がり電話をとった。

「もしもし。神崎です。」
父が自ら電話をかけることは珍しい。
「今、お宅の息子が私のもとに来ていましてね。勝手に入籍をしたと報告がありました。」
千晃は匡祐が握ってくれている手をギュッと握った。

匡祐がそんな千晃の方を見る。

その顔はとてもやさしくて、あたたかくて、まるで千晃に大丈夫と繰り返しているように見えた。

千晃の父は電話を切ると匡祐の前に立った。

「それで、君の策は?」