「福山のものにするという意味か?」
千晃の父はさらに険しい表情で匡祐を見た。
「違います。」
匡祐は負けじと鋭く冷静な視線を返す。

「桐生財閥の動きをご存じですか?」
匡祐が出す切り札に、千晃の父は驚きの表情を見せる。

桐生財閥は3大財閥の中の一つ。
その財閥の中でも一番大きい。

「我々の結婚が両財閥存続のための策ではないかと噂を流しているのは桐生です。」

千晃も匡祐を見る。その事実は知らなかった。

「桐生財閥は政界とも深くかかわっています。福山と神崎の両財閥を窮地に陥れて想いのままにしようという策があるようです。」
神崎にとっても福山にとっても、桐生は大敵だった。