「ん?」
匡祐は千晃の目を見つめる。
千晃はぎこちなく微笑みながら匡祐に告げた。

「婚約、解消してください」と。

「何言ってる?」
匡祐は千晃の言葉の理由を知っているからこそ穏やかに聞き返す。
「私と、婚約を解消してください」
匡祐は千晃の手を握る手に力を込めた。
「いやだ」
千晃は匡祐の返事に小さく息を吐く。
「私はあなたの力になれません。私を匡祐さんは支えてくれたのにごめんなさい。」
千晃は深く深く頭を下げた。

匡祐は千晃の手を離し、両手で千晃の体を包み込んだ。
「俺は神崎財閥じゃなく、神崎千晃が好きなんだ。神崎千晃と一緒にいたいんだ。ただ一緒にいたいんだよ。ハンバーガーかぶりついたりさ、他愛もない話したりさ、一緒にいろんなもの見て、食べて、選んで・・・。」
「?」
「それだけで十分なんだよ。」
匡祐の言葉に千晃は目を閉じる。