剣持の感じた異変は思っていたよりもおおきなことだと匡祐は感じた。
匡祐は飲み物に息を吹きかけて冷ましてから再び千晃に渡した。
後部座席にある自分のジャケットを千晃にかける。

「千晃」
匡祐に名前を呼ばれて千晃が匡祐を見る。
その目には輝きを感じなくて匡祐は千晃の心の痛みが伝わった。
「辛かったな・・・もっと早く俺が・・・」
匡祐が後悔を口にすると千晃が首を横に振った。
「違う。匡祐さんは悪くないでしょ」
千晃の力のない言葉に匡祐の後悔がつのる。遅かった。
こんなにも彼女が傷つく前に無理にでも行動を起こせばよかった。
自分に後悔していると千晃が匡祐の手に自分の手を重ねた。

その冷たさに匡祐は千晃の両手を自分の手で包み込む。

「話があるの」
千晃はまっすぐに匡祐を見た。