千晃はベッドの横にしゃがみ頭を下げた。
「初めまして。神崎千晃です。遅くにお邪魔してすみません。」
その声に匡祐の母がゆっくりと千晃へ視線を移した。
目と目が合って千晃が微笑むと匡祐の母も微笑んだ。
「あら、お客様?」
「そうだよ。母さん。」
匡祐も千晃の隣にしゃがんだ。
「あら、匡祐も来てたの?部活はいいの?」
「今日は休みなんだ。」
匡祐が千晃に目で合図する。匡祐の母の病状を聞いていた千晃も匡祐に頷いた。
「まぁかわいいお客様ね。彼女?」
匡祐の母が息子を見て微笑む。
匡祐は照れながら頷いた。「そうだよ。俺の彼女。」
「はじめまして」
もう一度千晃が頭を下げると匡祐の母が千晃の頬に手を伸ばした。
その手の温かさに千晃はなぜか泣きそうになる。
「匡祐を、よろしくね。」
最近、匡祐のことを認識できない日が多かった母に、匡祐が驚く。言葉を話すのも久しぶりの母が千晃に触れて言葉を交わしている。