「父から、今度何かあれば剣持さんを解雇するといわれたんです。」
「え?」
千晃の言葉に匡祐が眉間にしわを寄せる。
「厳しい人ですけど、ずっと神崎のために働いてきた剣持さんを解雇させるわけにはいきません。」
「千晃のお義父さんも、手ごわいな」
「本当に」

二人は心と体の疲れが吹き飛ぶようだった。

食事がすむと匡祐の運転で千晃はある場所へ向かっていた。
「母さん」
そこは匡祐の母の病室だった。
匡祐の言葉に母がちらりと千晃と匡祐を見る。
「母さん」
もう一度匡祐が母を呼んでも母は窓の外に視線を移してしまった。
「母さん、俺の婚約者の神崎千晃さんだよ」
二人は匡祐の母の座っているベッドに近づいた。