「お嬢様。今日最後の会議です。」
剣持からの言葉に千晃は持ち物をまとめて運転手の車に乗り込んだ。
会議の行われる場所への移動時間すら千晃は書類から目を離さない。
「この配色がやっぱり合わないと担当者に伝えてください。それからこの新作の靴はもう少しサイズにバリエーションを増やしてください。そのデザインなら大きなサイズでも見栄えするデザインだと思います。」
千晃が言葉にしたことを剣持が次々にメモに起こしていく。
「それから食品サンプルに関しては好みの分かれる味ですね。もう少し万人受けするような味にできるか改良の必要があるかと思います。」
ファッションブランドだけではなく、自然食品の会社も千晃は任されていた。
その試食程度にしか食事をとっていないのではないかと思うほど、千晃はさらに痩せていた。
疲れて肌もボロボロだ。

「お嬢様、到着しました。」
剣持の言葉に車を降りるとそこはこじんまりとした料亭だった。
「?会議って・・・?」
千晃の言葉に剣持が微笑む。
「今日は匡祐様とのデートが最後の会議です。」
「へ?」
「匡祐様はお車でいらしておりますので、私はこれで失礼いたします。」
剣持は千晃が話しかけるすきを与えないまま車に乗り行ってしまった。