話を聞きながら千晃は自分のことのように心が痛む。
「もしも少しでも会社の業績が下がるようなことがあれば、力を別の施設へ移す。今回の婚約で、お前の責任はさらに大きくなったことを自覚しなさい。」
父をにらむように鋭く見ながら匡祐は唇をかみしめていた。
「千晃。」
「はい」
「お前もだ。今日の会見の勝手な話はなんだ。」
「・・・はい・・・。」
「勝手なことができるほど、お前に権限は与えていないはずだ。自覚しなさい。」
「・・・すみません・・・」
千晃の父は千晃を見ようともしない。
「神崎を背負う人間として不適合なのは十分に承知しているが、これ以上私に後悔をさせるな。」
「・・・はい。すみません。」
結局、千晃は一口も食べ物を口にできないままに食事が終わった。

食事がすむと千晃の父も匡祐の父もすぐに立ち上がり仕事へ戻った。

席に残った千晃と匡祐は顔を合わせてお互いに力なく微笑んだ。